熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……そう? 私は今のあなたの方が、可愛らしくていいと思うけど」
詩織はそう言って、悪戯っぽく微笑む。
可愛らしいだなんて評価はまるで不本意だが、いつになく無邪気に笑う詩織を見ていたら、それだけで何もかも許せる気になった。
「可愛いのは詩織の方だよ」
囁くように言って甘い視線を送れば、詩織は困ったように視線を泳がせる。
そのうぶな仕草に男心を掴まれてしまった俺は、たまらず彼女の頬にチュッと口づけた。
「ちょっと……やめてよ、こんな場所で」
みるみる頬を赤くした詩織が、俺を睨みつける。
「じゃあどこならいい?」
「え?」
「一度ホテルに戻らないか? 濡れた服を変えたいし、シャワーも浴びたい。……詩織にも、もっと触れたい」
真剣な眼差しで、彼女を射抜く。頭上から照りつける日差しが、俺たちの肌と心をじりじりと灼いていく。やがて詩織は、何かを怖がるように瞳を伏せて言った。
「あなたに触れて、もし恋に落ちてしまったら……私、今までのように絵が描けるかしら」
詩織は一度失恋を経験して、それ以来恋愛とは無縁の生活を送っていたため、臆病になっているのだろう。
でもそんな心配は無用だ。俺は、彼女を傷つけたり悩ませたりするつもりは一切ない。
全力で愛を注ぐし、仕事のことだって誰より理解し、支えていくつもりだ。