ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「リラちゃんはお母さま思いなのね」
ソフィア様の声は優しかった。全然怒っていないみたい……。
リラはこくんと頷いた。
「うん、ママがだいすき」
「そう。大好きなママを困らせる人は嫌いなのね」
ソフィア様はそう呟くと立ち上がり、私に向き直った。
「あなたは良い母親なのね」
「あ、あの?」
「子供に沢山の愛情を注いであげたのでしょう? だからこの子はあなたをこんなに慕っている」
ソフィア様は息を吐いて目を閉じた。苦しそうなその様子に私の戸惑いは更に大きくなる。
「ソフィア様? 大丈夫ですか?」
心配になって声をかけると、ソフィア様は目を開き、どこか寂しそうな笑みを浮かべた。
「あなたは優しい人ですね、過去にあなたを否定した私を心配してくれるなんて……あなたは私を恨んで当然なのに」
「恨んでなんて、そんなふうに考えたことはありません」
私は直ぐに否定する。
ソフィア様からの手紙を読んだとき、確かに途方もなく傷ついた。
だからといってソフィア様を恨む気にはならなかった。
私がレオンのお母さまを恨めるわけない。だって彼が離れ離れになっても、お母さまを想っているのを知っていたから。
それに自分が母親になってソフィア様の気持ちをより理解出来るようになった。
「ソフィア様はレオン様を守りたかった。その一心だったと分かっていますから」
「……イリスさん、ずっとあなたに謝りたいと思っていたのです」
絞り出すように発せられたその言葉に、私は目を見開いた。
「ずっと後悔していました。あなたを酷く傷つけてしまったことを……あなたがひとりで故郷を出たと聞いたとき、なんてことをしてしまったのだろうと自分の罪深さに慄きました。あなたは私の息子を長く支えてくれた人だったのに」
ソフィア様が私に対して頭を下げる。
「謝らないでください。ルメールを出たのは私の意思です。自分で決めたことで誰のせいでもありません」
「でもそのせいで若いあなたに孤独と苦労を強いてしまったわ」
「いいえ、私は孤独なんかではありまえんでした。だっていつもリラと一緒でしたから。苦労とも思っていません。今まで過ごして日々はかけがえのないものです」
そう。私は幸せだった。
孤独だったのはむしろレオンの方かもしれない。
「でも私の選択で、父と娘を引き離してしまいました。それだけは今でも後悔しています。
もっと良い方法があったのではないか、私は間違っていたのかもしれないと」
俯いた私を、それまで黙っていたレオンが抱き寄せた。
ソフィア様の声は優しかった。全然怒っていないみたい……。
リラはこくんと頷いた。
「うん、ママがだいすき」
「そう。大好きなママを困らせる人は嫌いなのね」
ソフィア様はそう呟くと立ち上がり、私に向き直った。
「あなたは良い母親なのね」
「あ、あの?」
「子供に沢山の愛情を注いであげたのでしょう? だからこの子はあなたをこんなに慕っている」
ソフィア様は息を吐いて目を閉じた。苦しそうなその様子に私の戸惑いは更に大きくなる。
「ソフィア様? 大丈夫ですか?」
心配になって声をかけると、ソフィア様は目を開き、どこか寂しそうな笑みを浮かべた。
「あなたは優しい人ですね、過去にあなたを否定した私を心配してくれるなんて……あなたは私を恨んで当然なのに」
「恨んでなんて、そんなふうに考えたことはありません」
私は直ぐに否定する。
ソフィア様からの手紙を読んだとき、確かに途方もなく傷ついた。
だからといってソフィア様を恨む気にはならなかった。
私がレオンのお母さまを恨めるわけない。だって彼が離れ離れになっても、お母さまを想っているのを知っていたから。
それに自分が母親になってソフィア様の気持ちをより理解出来るようになった。
「ソフィア様はレオン様を守りたかった。その一心だったと分かっていますから」
「……イリスさん、ずっとあなたに謝りたいと思っていたのです」
絞り出すように発せられたその言葉に、私は目を見開いた。
「ずっと後悔していました。あなたを酷く傷つけてしまったことを……あなたがひとりで故郷を出たと聞いたとき、なんてことをしてしまったのだろうと自分の罪深さに慄きました。あなたは私の息子を長く支えてくれた人だったのに」
ソフィア様が私に対して頭を下げる。
「謝らないでください。ルメールを出たのは私の意思です。自分で決めたことで誰のせいでもありません」
「でもそのせいで若いあなたに孤独と苦労を強いてしまったわ」
「いいえ、私は孤独なんかではありまえんでした。だっていつもリラと一緒でしたから。苦労とも思っていません。今まで過ごして日々はかけがえのないものです」
そう。私は幸せだった。
孤独だったのはむしろレオンの方かもしれない。
「でも私の選択で、父と娘を引き離してしまいました。それだけは今でも後悔しています。
もっと良い方法があったのではないか、私は間違っていたのかもしれないと」
俯いた私を、それまで黙っていたレオンが抱き寄せた。