潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
送信しながら思い出す日のこと。
あれが、私をマザーズに引き寄せた一番最初の思い出に違いない。


『今度ゆっくり聞かせて。それよりも今は、ちょっと別の話がある』


そう流してくると電話が鳴り、私は驚いて通話をタップした。


「もしもし、どうしたの?」


ドキッとしながら返事を待つと、液晶の向こうから「うん…」と低い声が響いてくる。


「香純」


名前を呼ばれて胸がキュンと鳴る。
「何?」と発する声も裏返ってしまいそうで、ぎゅっとスマホを握る手に力が入った。


「再来週の土曜日は暇か?うちの両親が、香純に会いたいと言ってきたんだけど」


どうも祖父さんが喋ったらしい…と理由を説明し、時間があるかと訊ねる。


「…ご、ご両親と!?」


えっ…と一瞬答えに詰まった。
この間、彼の祖父母と会ったばかりなのに、今度はご両親!?とその展開の早さについていけない。


「駄目か?」


残念そうにくぐもる声を聞くとダメなんて絶対に言えず、ゴクンと唾を飲み込みながらも、「いいけど…」と返事。


「そうか。なら親にはOK言っておくよ。…ああ、そうだ」

「は?」

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