潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「あ、いや、これはどうも」


恐縮したお父さんはグラスを上げて注いでもらい、それを一口飲むと、次は私が…と言って代わり、別の話題へとすり替えた。


「百瀬さんは、ずっと議員のお仕事をされていらっしゃるんですか?」


話を振られた父は一瞬たじろぎ、ええまあ…と言いながらビールグラスを空にする。


「私の実家は、地方で代々市長や市議を務めている家柄で、自分の父も市議や市長を歴任しておりましたし、私も大学卒業後からその秘書を務めて経験を積み、町議、市議、市長…へと敷かれたレールの上を歩いてきたような感じです」


田舎なもので知った名前がウケるようです、と微笑み、彼のお父さんも、ふむふむ…と納得したように頷きを返す。


「それでは、地元の方とはご縁が深いのですね」

「深過ぎて、なかなか自分の思い通りには生かせて貰っていませんけどね」


だから尚行君が羨ましいですよ…と褒め言葉にもならない言葉を付け足し、母は呆れた顔つきで相手のご両親へと目を向けた。


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