潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「…わ、私は別に何も」


ただ普通に仕事をして、メールのやり取りをしていただけ。
それ以外のことは何もしてない。


「それは、俺が単純に彼女に熱を上げて、会いに行こうと決めただけですよ」


言葉に詰まり弱っている私を見遣った彼は助け舟を出したつもりなのか、頬を染めて親達の方へと向き直る。


「彼女の仕事ぶりとか顧客への接し方、それと丁寧な対応の仕方が俺の理想に近くて、是非会って実際に話してみたいと思ってしまったんです」


会いに行って正解でした、と自信満々に話すもんだから、さっと顔が熱くなる。

またしても顔を俯けると、母はポン…と肩を叩いてくるし、ご両親は半ば呆れ気味に、おいおい…と言って、続きの言葉を制しようとした。でも、彼は勢いに任せて……


「俺は、仕事を通して香純のことを知ったけど、プライベートを知ったらもっと好きになって、今後も彼女を深く知り、いずれは今以上に近い関係に…」

「…まあ、それは別に急がなくてもいいでしょう」


一人冷静でいたらしい父はクールな声を発し、ビール瓶を取り上げると尚行さんのお父さんのグラスに傾けて、「どうぞ」と口を差し向けている。


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