潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「んぅ……。んんっ…!」


苦しそうに香純は顔を横に振ろうとするが、俺はそれすらも静止させ、両手で頬を包み込む。
そのまま暫くキスをし続け、香純の力が抜け落ち、トロンと目元が蕩けるのを確認してから、ようやく唇を離してやった。


離された香純は両手で口許を覆い、ポスン…と胸の中に顔を埋めて深呼吸を繰り返している。


その背中を抱こうと腕を回せば、ぎゅっと指先で手を握り返してきて、待って……と囁くと顔を上げ、真面目な顔つきで俺のことを見返した。



「私…」


開いた唇はリップのカラーが取れ、素の色が露わになっている。
そのピンク色に見惚れていると彼女が指先に力を込め、「ただ羨ましかっただけなの…」と囁いた。


「えっ?」


どういう意味だと訊き直すと、香純は「分かってないの?」と声を漏らし、トン…と指先で左手の指を突いてくる。


「此処に指輪があったでしょ」


呟くとハァ…と溜息を漏らし、「自分達とそんなに付き合ってる期間は変わらない筈なのに…」とガッカリするように肩を落とす。



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