潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
ワクワクしながら訊ねてくる彼女の言葉に、他の社員までが振り返る。
振り返らない社員達も当然耳はダンボになってそうで、そうよ…とは絶対に肯定できず、そんなことある筈ないじゃない…と思わず嘘を吐いてしまった。


「本当ですかー!?」


彼女は疑いながらもその話は必要以上に聞いてこず、それはそれで、少しホッとしたんだけど……



休憩時間になり、トイレへ向かった時のことだ。
個室で用を済ませて出ようかと鍵に手を掛けたら、外から入ってきた人が「ええっ!?」と素っ頓狂な声を上げ、ビクッとして手が止まった。


「副社長に女がいる!?それって誰!?この会場内にいるの!?」


副社長と聞いた途端こっちは胸がギョッとし、もしかして彼のこと?とつい聞き耳を立ててしまった。


「そうよ」


相手の人は声のトーンを下げ、ボソボソと小声で、「こんな事なら今日来るんじゃなかった」と呟いている。


後悔の念を漏らした人は、折角プライベートを一緒に楽しめるかもと思ってきたのに…と本音を囁き、それなのにダメ出しとかされてガッカリ…と言葉尻を落とす。


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