潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
彼と入ったお店は月曜日とは言え賑わっており、少し高級感の漂う雰囲気で、どうして一介のサラリーマンの彼が、こんな店を知っているんだろうか…と違和感を覚えた。


「ここ、以前に取引先の方に無理やり連れてこられたお店なんです」


席に通された後、お絞りで手を拭きながら説明をされ、支払いはこっちだったので非常にヒヤヒヤしました…と明かしてくれた。
私はそれを聞きながら、愛想がないからせめて美味しい物を出す店にでも連れて行けと誘われ、断りきれずに応じたのかな…と思いつつ、そう…と納得。


「何を飲みますか?」


自分は取り敢えず生ビールでいい…と店の人にオーダーしている。
私も一瞬それと同じでいいと思いかけたが、急に気が変わり、「お銚子一本付けて下さい」と願った。


「日本酒飲めるんですか!?」


研修社員の越智さんは驚いたような表情に変わった。
私は、うん…と嘘を吐き、越智さんも飲めるなら少し付き合ってね、とお願いした。


届いた日本酒はとても甘くて美味しかった。
お冷で飲めるから悪酔いしそうだとも感じたが、むしろ飲んで酔いたい気分が私の中にはあった。


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