潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
(中に入る前に汗くらい拭かないと…)


流石に額に汗を付けたままじゃ入れない…と、お店の横に身を潜めて拭き取る。
その間も何だかソワソワしてしまい落ち着かない。
越智さんという人がどんな方かは知らないけれど、ちゃんと挨拶して、日頃のご愛顧を感謝しなければいけない。


(私の言動一つで、社風とかも伝わるかもしれないし)


気をつけていかなければ…と気を引き締めてドアの持ち手を握る。
ぐっと力を入れて押し開けると、黒いドアは難なく開き、明るいオレンジの光に出迎えられて、眩しい…と思いながら目を細めた。



「いらっしゃいませ」


白いワイシャツと黒のエプロンを身に付けたギャルソンが現れ、私の心臓は一気に緊張で鳴りだす。


「あ、あの私、越智さんと仰る方とこのお店で会う約束をしていて…」

「ああ、越智様のお連れ様ですね」


細面な顔立ちの彼は私を見ると和かな笑みを浮かべ、先程からお待ちです…と言いながら席に案内してくれる。


(もう来てるんだ…)


そりゃそうか…と思いつつも、ひょっとしてかなり待たせた?と考えながら男性の後を追う。
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