命令恋愛
☆☆☆

いくらうがいを繰り返しても、吐き気は止まらなかった。


「優奈。体操着持って来たよ」


「ありがとう香菜美……」


傷口は背中とお腹、それと頬の三カ所にできていた。


背中の傷が一番深かったようで、なかなか血がとまらない。


あたしは血に染まったシャツを一旦脱ぎ、それをキツク体に巻き付けた。


ひとまずこれが包帯変わりだ。


その上から体操着を来て、あたしと香菜美はトイレを出た。


でも、この状況で授業を受けることはできなかった。


さっきから脂汗が止まらず、立っているだけで精いっぱいだ。


「家まで送るよ。歩ける?」


そう言う香菜美はあたしの鞄と、自分の鞄を持ってくれていた。


「香菜美も早退するの?」


「当たり前でしょ? 家に戻ってからでも、ちゃんと手当てしなきゃいけないんだから」
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