命令恋愛

☆☆☆

香菜美に支えてもらうようにして家に戻ると、あたしを見た母親はひどく慌てていた。


「どうしたの優奈、その頬の傷！」


「ちょっと体育の授業で怪我しちゃって。派手な傷だから早退したの。香菜美は心配して、一緒についてきてくれた」


あたしは早口で説明をした。


正直、早く手当てをしたい。


「まぁ！　ごめんなさいね香菜美ちゃん、鞄まで持ってもらって」


そう言う母親に香菜美は「大丈夫です。でも、ちょっと心配なのでおじゃましますね」と、冷静に言って家に上がった。


「なにかあったら呼ぶから、大丈夫だから」


あたしは母親へ向けてそう言い、痛みをこらえて自室へと向かった。


幸い、恭介からの命令が始まってからあたしの部屋には痛み止めや消毒液が常備されている。


それを使い、手当てをすることができた。


ようやくベッドに横になると「大丈夫？」と、香菜美が聞いて来た。


「うん。血は止まったし、痛み止めが聞いてるから大丈夫」