はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
どんなに努力しても生まれた家は変えられないから、普通の家に生まれ育った私は玲司さんにふさわしい人にはなれない。


「無理です」

「何が?」

「私では無理です。離れませんか? あなたは支配人で私はただの社員です。それだけの関係に戻るのが良いかと……」

「は? なにを言う? 離さないよ」


離さないという言葉通り、玲司さんは私を引き寄せて、強い力で抱き締めた。必死になる彼の気持ちが伝わるが、好きという気持ちだけではどうにもならないこともある。


「家柄なんてそんなの重要じゃない。一番大事なのはお互いの気持ちだろう? 俺にとっては誰よりも藍果が大切で、誰よりも藍果が好きだ」

「私だって……」

「藍果も同じだろう? だから、俺を受け入れてくれたんだよね? こんなに嬉しいことは初めてだったのに」


悲痛な声で問いかけられて、胸が締め付けられる。私だって、好きだし、求められたのは嬉しい。

顔を見るだけで、話をするだけで嬉しくて、触れ合うことで幸せになった。

だけど、結婚まで考えるとなると、お互いの気持ちだけでいけない。周りのことも考えなくてはいけない。

だから、離れる選択をした。
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