はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「やっと見てくれた」

「ずるいですよ」

「ずるいと言われてもいいよ。藍果が見てくれない方が辛いからね。もう泣かないで」


少し悲しそうな顔で、私の涙を拭う。驚きで涙は止まったけど、一度緩んだ涙腺はちょっとしたことでまた緩みそうだ。


「とりあえず、食べよう」

「はい」


せっかくの料理だ。私のために頼んでくれたものを食べないで帰るのは申し訳ない。食べる気分ではないのに、お腹は空いているのかどんどん胃袋に入っていく。

美味しいはずなのに、味を全然感じない。ただ胃袋を膨らませるだけの食事。

玲司さんが料理について、説明してくれているけど、全然頭に入らない。なにを言っているのか理解出来なく、ただ「はい」としか返せない。

そんな失礼な態度の私に彼は、穏やかな表情のままで、最後にはコーヒーを淹れてくれた。


「すぐ片付けが来るから、そのあとのんびりしよう」

「私、帰ります」

「どうして?」

「だってもう玲司さんと一緒にいられない」

「うちの母親が言ったこと、まだ気にしている? 気持ちは分からなくないけど、俺を信じて」


信じる、信じないという問題ではない。
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