はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
だけど、ほらと言われて触れた彼の胸の動きは速くて、本当に緊張していた。運転しながらも挨拶の言葉を練習していたという。


「大丈夫です。一応話はしてありますし、なにか言われても私がフォローします」

「さすが藍果。頼もしいね」


いつもは玲司さんの方が頼もしいが、こういうときは私もしっかりしなくてはいけない。ふたりの将来にとって、大切なことだから。


「夜分にすみません。今日はお時間を作っていただき、ありがとうございます。初めまして、高梨玲司と申します」

「いえいえ、こちらこそ私の都合に合わせてもらい、ありがとうございます。高梨さんは藍果の勤めているホテルムーンパークの支配人をされているそうですね。まだお若いのにすごいですね」

「あら、お父さん。話していなかったかしら? 高梨さんはホテルムーンパークの次期社長になる方なのよ。だから、若くても立派な支配人」

「は? 次期社長になる方? 聞いてないけど」

「話したつもりだけど、抜けていたかしら? まあ、いいわ。そういうことだから」


いきなり次期社長という情報を得た父は目をパチクリさせていたが、母はそういうことと済ませた。
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