はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
私はソファーに座る前に深々と頭を下げた。


「そう、固くならないで座って」

「藍果、座ろう」

「はい、ありがとうございます」


優しそうに微笑む社長に気が緩みそうになるが、背筋を伸ばして座った。ずっと社長の隣に座るお母さんからの視線が痛いくらい、刺さっている。

ハッキリいって、怖くて見れない。


「この前も話をさせてもらったけど、こちらの横川藍果さんとの結婚を前提とした交際を認めていただけないでしょうか?」

「反対です。認められません。横川さんにも話したわよね? 次期社長の玲司の相手にはふさわしくないと」


社長よりも先にお母さんが口を開いた。社長は口を挟まず、腕組みをして聞いている。


「ふさわしいとかふさわしくないとかは俺が決めます。好きでもない人と結婚したくはありません。俺は自分が好きな人と結婚したいです。俺の好きな人は藍果です」

「一時的な感情だけで結婚して、後々困るのは横川さんよ。今まで経験のしたことのない世界に入って、苦労するのはかわいそうでしょ? だから、ちゃんと合った人と結婚するのが一番いいの。最初は好きじゃなくても好きになるかもしれないじゃない?」
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