はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
水曜日、廊下で原田さんと一緒にワゴンを押していると前から支配人がやって来た。

「お疲れ様です」と私たちが言うと、支配人も同じように返してきたが、すれ違うときに私の耳元に顔を寄せてきた。


「明日夜六時、上に来て」

「はい」


小声で言われたから、私も表情を変えずに小声で答えたが、心臓は大きく動いていて、内心激しく動揺した。

耳元って、やばい!

それになんか秘密のことをしているみたいで、ドキドキする!

ただ連絡事項を伝えてきただけかもしれないけど、私の心は落ち着かなくなって、清掃中に頬を何度と緩ませてしまっていた。

そのたびに「なにかあったの?」と原田さんに聞かれて、「いえいえ」と怪しく答えた。

翌日にと迫った支配人との食事は仕事の話が主になるとは思ってはいるが、話が出来る時間をもらえたのが本当に嬉しかった。

あの時の写真を忘れずに持っていこう。あれを見せたら、どんな反応をするだろうか。話したら、あの時のことを思い出してくれるかな。
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