はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
母から写真を送ったという話は聞いていない。知らないうちに送られていたのだ。


「たまにお客様から手紙や葉書をもらうことはあるんだけどね、写真まで同封されていることはあまりなくてね」


写真を見ながら話を始めた支配人は言葉を区切って、私を真っ直ぐと見据えた。

私は相槌を打つようにこくりと首を縦に軽く振った。


「この写真が入った手紙を見たとき、申し訳ないんだけど、お客様の名前は覚えていなくて。でも、この女の子のことは覚えていたよ。階段から落ちそうになって支えたのも、緊張した顔で俺の隣に立ったことも印象的で覚えていた。中学生にしては大人びた表情をする子だったけど、うまく気持ちを表に出せない真面目な子なんだなと感じた」


私は何も言葉を返せなく、瞬きを何度も繰り返して彼を見つめた。

覚えていないと思ったのに、覚えていたくれたから、予想もしなかったことに手が震える。

支配人は激しく動揺している私に気付いていないようで、言葉を続けた。


「まさか大人になったこの女の子と再会出来る時が来るなんて、思ってもいなかったね」
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