はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
我が家は犬どころか何もペットは飼っていない。ほかに適当な答えが浮かばなかった。

支配人は「犬?」と眉根を寄せる。犬と間違えたなんて、もしや気を悪くさせてしまったかも。


「あ、いえ、あの……」

「そうか、犬か。きっとかわいがっている犬なんだろね。どんな犬なの? 写真ある? 見せてよ」

「えっ、あ、ごめんなさい!」

「ん? なんで謝るの?」

「犬飼ってないです。恥ずかしいことしちゃったから、咄嗟に出た嘘で……本当にすみません」


こんなに早く嘘がばれるとは……私は居たたまれなくて、肩を落とす。失敗した。昔から嘘をつくのは下手だったのに、浅はかに嘘をつくからだ。

支配人は一瞬目を丸くしたが、突然笑いだした。


「横川さんって、意外に楽しいよね。しかもかわいい。うん、かわいい」

「えっ、かわいい?」

「うん。中学生の横川さんもかわいかったけど、今もかわいい」


かわいいと言われたのはいつ以来だろう。中学生の頃からは『大人っぽい』『きれい』だとしか言われた記憶がない。
< 57 / 168 >

この作品をシェア

pagetop