はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
フロントを第一希望にしていた彩音が心底羨ましそうな声を出す。私もフロントを第二希望にしていたから、羨ましい。


「で? ふたりは?」

「私は営業部企画課で、彩音は販売課」

「はあ? ふたりとも本社? すげー!」


苦笑して頷く私たちに石田くんは「すげー」を連発した。確かに本社には現場業務を数年経験してから、配属になることが多いと聞いていたから、すごいのはすごいのだろう。

辞令をもらってもすごいという実感は湧かなかったけど、石田くんに言われてじわじわと湧いてくる。

どこに配属されてもがんばろうと家を出る時は思っていた気持ちを思い出す。本社勤務でもがんばらないと。

配属が決まったあとは、東京勤務の新入社員全員揃っての研修があり、それぞれの着任は翌日となっていた。

研修中はスーツ出勤だった。しかし、明日からは自由だという。現場勤務なら、制服があるので奇抜な服でなければ良いだろうけど、本社勤務には制服がない。

これからもスーツで通勤したほうがいいのでしょうかと人事課の人に聞くと、オフィスカジュアルな服でいいと言われるが、彩音と首を傾げた。
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