刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
----もしもしインデックスさん。もしもーし。

『もしもし?如何用かツバサよ?』

インデックスたん、たぶんオレの聞き間違いだと思うんだけどぉ。あのデカい人今「魔神王を葬り去る」 とか言った?いやはは、そんなまさかねぇ。

『ツバサ……』

異世界転生って言ったらあれじゃん?すんごいチートな能力とか授けられたりとかさ、ちょーっと現世の記憶を頼りに努力したらバグで成長しまくるとか、ほらそういうお決まり的な?あるじゃん?

『ツバサよ……』

それなのに、いきなり出てきた場所が魔神王の居城とか、あのゴツい人顔に似合わずユーモアセンスありすぎでしょ?なに?あのなりで『スーパースター』とか『コメディアン』みたいなマイナー職だったりすんの?まじ草なんだけど。w

『ツバサ。ツバサよ……』

インデックスたんなに?そんな間を溜めちゃって、いつ種明かしするのかタイミング測ってるんでしょ?分かっちゃうよそんなあからさまな。

『ツバサ、もう皆は扉をくぐるぞ。あの扉は鍵の所有者とパーティーしか通ることはできず、扉を開いておくのにも時間制限がある。それを超えてしまえばツバサだけがここに残されることになる』

----ふっ。冗談だろ?

オレが細くした目で一行の様子を探ると、本当にもう扉に手をかけていた。あ、もう鍵は開いて瘴気みたいなのが盛れ出してるから多分タイムリミット始まったよね。ふふっ。

「何をしているアーチャー!置いていくぞ!!」
「はい、ただいま!」

オレは重剣士の怒号に内心ビクビクしながら、居酒屋の店員ばりの「はい、ただいま!」 と、腹の底から返事をして、先行く一行に追い付こうと駆けだす。

ぬかるむ床、溢れ出た瘴気に触れた所から寒気が一気に広がっていく。怖い。怖い。怖い。ワクワクする!!

にしても、ははっ。なんで、念願の異世界転生した先が(恐らく)ラスボス手前のセーブポイントなんだぁぁぁあああっ!!!

『転生者ツバサよ--武運を祈る』

こうして、平穏な日々を送っていたはずのなんの取り柄もないオレの、異世界生活が始まったのだった。

「……なんか思ってたのと違うぅううううっ!」
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