刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
異空間で瘴気によるダメージを受けたイスカは自分の回復をしている。しばらくは補助魔法にも期待できないな。

「アレックス。あいつらが勝手に喋っている内にしかけましょう」 そうミーアが提案をすると、アレックスはパーティーメンバーの様子を伺い、大きく頷いた。

「よし、じゃあ作戦通りに行くぞ!GOツバサ、ミネルヴァ!ミーアはオレに続け」

アレックスは合図を出して、大剣を構えて前進していく。ミーアは獣人に変身をしてすぐさまアレックスを追いかける。

「イニシアチブを取る為の最適解、こっちだろ!?カミーラを吹き飛ばせ「タイタン・アロー」!!」

前回の失敗はフラッシュ・ショットで敵の目を眩ませることだけを考えていたことにあると思う。確かに先制攻撃の選択として必中のフラッシュ・ショットはほとんどの場面で定石となるだろう。でも、今は目くらましの影響がほぼないボス戦だ。そして狙いは各個撃破にある。

カミーラを他の2匹から引き離す手段としては2通り、一つは前回と同じく3匹の目をくらませて、ひるんだ隙に前衛2人がカミーラを別の場所に引き離す方法。しかし、こちらはは目くらましに免疫を持っていそうな今回の様な相手には悪手だ。

とすれば、当たった対象を強制的に退かせることができるタイタン・アローをカミーラに当てて吹き飛ばし、ミネルヴァお姉さまの魔法で作られる時間に次の矢を射る。これがこの場においての最適解ってやつだろ!?

完全にこちらをなめきっていたカミーラはこめかみにタイタン・アローを無防備に受けた。鈍い音が響き、小柄な身体は宙を舞って吹き飛んでいく。

「カミーラ様!?貴様よくも・・・・・・」
「あら、あなたの相手は私よ。「ダーク・アックス」!!」

間隙など無い早さでミネルヴァお姉さまの魔法が、カミーラに気を取られたティケルヘリアと微動だにしないノブレスを飲み込んだ。その暗黒の斧が暴れ狂う横をアレックスとミーアが駆け抜けていった。

よし、かなり不安はあったけれど幸先の良いスタートが切れている。インデックス、何か相手の動きを封じるスキルはないのか?

『現在の位置からでは不可能だが、中距離まで詰めるのであれば光の矢を複数射て結界を張る「デルタ・ウォール」がある』
「よし、それでいい」

オレはすぐさま前進をして距離を詰めていく。今のところミネルヴァお姉さまの魔法は機能しているようだ。特に2匹に動きは見られない。

『注意点として「デルタ・ウォール」は対象の力量によって封じ込めておける時間が変化する。ティケルヘリアとノブレスの力量から推測するに数秒の足止めが良いところだろう』

中距離まで詰めるリスクを負って、ようやく数秒の時間稼ぎができるってか。ほんとに30秒のノルマが途方もなく長く感じるよ。オレは有効射程範囲に詰めて弓を構える。放った三本の光の矢は空中で回転しながら、狙ったポイントへと山なりの軌道で降り注ぐ。カーペットに突き刺さった光の矢が放つ光がお互い引き寄せ合い、三角形の光を浮かび上がらせる。

キンと甲高い音が聞こえて結界が作動し、輝くピラミッドがティケルヘリアとノブレスを、ミネルヴァお姉さまの魔法と共に封じ込めた。

「よくやったわツバサ!私は大魔法で追撃をするわ。少し時間がかかるから頑張ってちょうだい」
「はい!」

ミネルヴァお姉さまが詠唱を始めると、白い肌に無数のルーン文字が浮き上がってきた。放たれるオーラが地面を揺らす。



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