あかいろのしずく
純は唐突に呟きます。
「なんですか?」と、僕は尋ねます。


「お礼、何がいい?」


純は聞き返してきました。



こういうところなんですよね。ちゃんと、相手がされて嬉しいことを分かっていてくれるところ。

ミナトから離れようとしないのも、ミナトのことを想う気持ちがあるから、という理由があるのです。

優しい子です。他人を思いやれる、優しい女の子。

僕が君を大切に思う理由も、そのままで。





「いりませんよ。代わりにそれを大事に取っておいてください」

「......。そっか、うん。そうだね」



純はそう言って、カバンに箱をしまいました。マフラーに顔を隠しながら、しまいました。なんだかその様子が引っかかって、僕は純の顔を覗き込みました。

そして気づきます。
純は笑っていませんでした。





「......どうしたんです?」




純は、泣いていました。
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