あかいろのしずく
店の中は温かい空気が流れていました。
女性が机を拭き終わってこちらに振り向きます。
ふわりと揺れるショートボブ。くりっとした黒い瞳。
エプロン姿の彼女は、なにが嬉しいのかにっこりと笑っていました。
その笑顔に僕は、見覚えがありました。
「びっくりした? 久しぶりね」
「......ええ」
「実はアルバイトしてたんです。今日で終わりなんだけど」
「髪、切ったんですか?」
「うん。さっぱりしたでしょ」
顔にも足にも腕にも、傷はありませんでした。
クリスマスは終わったのです。何もなかったのです。
「もう! どうしたのよ黙っちゃって」
「いや......」
安心して言葉を濁すと、気づかれないように静かに息をつきました。緊張がとけて、続けて僕は言います。
「僕も話したいことがあるんです」
純は笑います。
その胸には僕があげた、赤い雫のペンダントがありました。