あかいろのしずく
やっぱり......そうなんだ。



「じゃあ、私はまだ良い方なんですね」



そう言って、私は笑って見せた。が、男性は次の瞬間、私の手を無理やり掴んで引っ張った。



ベッドから落ちそうになり、思わず「ちょ、なにして......!」と声を上げそうになった私。でも、彼の目を見て、それは憚られる。



「無理しても無駄ですよ」



手が震えていた。汗もじっとりとかいている。
私はすぐに、掴んでいた手を振りほどいて背中に隠す。


心臓がどくどくと鼓動する。ほんの数秒、私達は見つめ合った。
いつから気づかれていたんだろう。
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