あかいろのしずく

「良い方もなにもない。みんながみんな、同じぐらい傷ついてるんです」



彼の言った言葉に、心が揺れる。



そうなのかな。

酷い目に遭わなかったことを後悔しているわけじゃないけど、なんだか「私がどうしてこんな目に」って思うのは、違う気がしてた。


私より酷い目に遭った人がいることを、知っていたから?

それとも単に、たまたま私がそこにいて見てしまったことが、理由もないただの「不運」だったと片付けられるから?



蓋が開いたみたいに、感情が流れ出てくるのが分かる。




「隠さなくてもいいんじゃないですか?」



瞬間、堪えていた涙が、堰を切ったようにこぼれてきた。
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