あかいろのしずく
ただ、

「でも、そこまでで、その後は何も覚えていない」



そう。何も覚えていない。

今どうしてここにいるのか。どこで眠りについたのか。昨日目を閉じたのは?
昨日最後に時計を見たのはいつ?

それも、どれも、全部記憶にないものばかり。


どういうこと?


混乱する私に、彼はまた言う。



「それがたぶん正解なんだよ」

「え?」

「記憶が無いのは歌を聞いてからで、それまでの記憶はちゃんとある。それは俺も同じだ」



サユリさんとショウトに目を向ける。二人はほぼ同時に頷いた。
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