あかいろのしずく
でも。



「サキ、ちゃん」



いつも思ったことをすぐ口にすることはあまりなかった私が、この時誰かにそう促されたみたいにサキに声をかけたこと。

きっと何か、意味があったんだと思う。



「もう少し、肩の力を抜いても大丈夫なんじゃないかな」



それは私が思っていた通り、独り言で終わった。
サキは私の方に目をやる事も、頷くことも首を振ることもしなかった。


部屋の中にヒーターや暖房といったものはなく、当然、温かい空気にさらされれば温かくなる木でできた部屋は、冷たい空気にさらされ続け温度を失っていた。
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