あかいろのしずく
私達が先生の都合で殺される準備は、私達が気づかないうちにとっくにできていたということ。
「ナナカ先輩」
ショウトが私を呼ぶ声がした。
上から覗く表情は憂い顔そのもの。そこには先輩の顔色がすこぶる悪いです、と丁寧に書いてあるように思えた。
「大丈夫ですか? センセーに言った方が......」
先生。
いつもならスルーしていた。銃の引き金を引いて弾が出るように、その言葉を聞いた途端酷く寒慄することもなかったはずだった。
ドクンドクン、と心臓の音が喉の奥までせり上がってきていた。
「やめて」
自分の声が空気を裂いて響き渡る。