あかいろのしずく
見せつけられたのは、なんの悪意も感じられない笑みだった。それから西平は、純のことについて何か知っていることはないかと尋ねてきた。
俺は素直に答えようとした。今思えば催眠のせいなのだろう。でも、その時唐突にぼんやりと、あの雪の降った日の会話が俺の中に蘇ってきた。
『何するか分かんないんだ。もう抑えが効かないかもしれない。純ちゃんのこと、どうしても離したくないから......』
あの時の会話には続きがあった。
「嫌だ」と泣いたミナトは、その後遺言のように俺にひとつ、頼みごとをした。
『もし何かあったらさ、俺のことちゃんと叱って?』
ミナトはきっと、誰にも言えなかったんだろうなと思った。弱々しい顔をしていたミナトも、その時は真っすぐな目をして俺を見ていた。