あかいろのしずく

働かない頭でようやっと思いついたのは一つ。



「......薬品の効果か?」



再び見上げてそう問えば、西平は笑っていた。何も知らない俺を見下ろして、面白可笑しそうに笑うその姿が、俺には悪魔のように思えた。



「麻酔性の蒸気ですよ、アズマくん。煙は上に行くけれど、この蒸気は空気より重いんです。それに蒸気の方が少量でも体に影響が大きい。言ってる意味、分かりますよね?」



ぐら、と視界が揺れて、俺は床に倒れた。分かるよ、痛いほど分かる。
だからお前は俺みたいに姿勢も低くしなかったんだ。だからずっと余裕だったんだ。俺がこの部屋に留まって考えていた時点で、もう。



「くっ、そ......」
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