あかいろのしずく

どうせそれで冷たい目を向けられるぐらいなら、もういっそのこと会わない方がいいのです。向こうもきっと会いたくないでしょう。


純に会って彼女を汚すような真似もしたくありません。
そうです。そうなのです。これこそ平和的解決です。



僕はずっとこうしたかった。

カウンセラーになってから何度も思ったのです。誰も傷つけない道を歩みたかったと。もう誰にも悩ませたくないと。




女の子が「ついてきて」と言うので、僕は立ち上がり、差し出された手と自分の手を繋ごうとしました。

その時でした。







「せん、せい......?」





聞き覚えのる声は、鼓膜だけでなく僕の心をも大きく揺らしました。
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