あかいろのしずく

確かに、それは、あの子の声でした。
間違いない。間違うはずがありませんでした。


必死になって辺りを見渡します。どこから聞こえたのでしょう?
まさか、僕の幻聴だったりはしないだろうか。

幻聴ならそれでいいです。きっとその方が、この先の不安を感じることもないでしょう。僕はこのまま安心して地獄にも行けるでしょう。


裏切られると分かっている無駄な期待も、しなくていいはずです。





声が聞こえて、会いたいという気持ちが膨らむのを感じました。分かりやすいぐらい心臓の鼓動が速くなりました。そんな自分の変化が分かりました。僕にははっきりと分かっていました。


このままでは、ダメだ。
僕は焦ります。
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