広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
駅から広瀬くんと並んで歩く。

今日は天気がよく、かといって暑すぎもしないまさに秋晴れという空。

ときどき気持ちのよい風がそよぐ。

「あとちょっとで着くからねー」

「うん。……日下部さんの家って、結構学校から距離あるよね。電車通学?」

「んー、基本的には歩きかな。あんまりにも天気が悪いときは電車使うけど」

「え、そうなんだ。歩きだと大変じゃない?」

「全然。私、お散歩好きだから。朝はお弁当のこと考えたりしてー、帰りは買い食いとかしてー、のんびり歩くの。楽しいよ」

「………」

広瀬くんが驚いたように小さく目を開いた。

これは……結局食べ物かよ、とか思われてる?

いやいや、広瀬くんはそんなことは考えないか。

「そういえば広瀬くんの家ってどの辺?」

「僕は……学校のすぐ近くだよ。家から近いところで、なるべく進学に有利なところを選んだから」

「そっかー」

てことは、広瀬くんは大学受験を見越して高校受験したってことか。

さすがだなあ。

ちなみに私は、制服の可愛さと学食あるところで選びました。中学は学食なかったから憧れていたのです。

高校生活楽しいから結果オーライだけど。

「広瀬くんはがんばり屋だねえ」

「まさか。まだまだ全然だよ」

そうサラリと言った広瀬くんは、謙遜などでなく、本当にまだまだまだと思っているみたいだった。

そんなこと言ったら、私なんてどうなるのだろうか。

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