広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
「あの……男が料理を習うのって、やっぱり珍しいですか?」

「え?」

「今、女の子だと思ってたっておっしゃったので……」

広瀬くんの顔がわずかだが強ばっている。

あまり見ない表情だ。

不安そうにさえ見えた。

「いや、そんな意味じゃないよ。のんちゃ……和花は今まで女の子の友達が多かったから、今回もそう思ったってだけで。

男性で料理を習いにきている人ももちろんいるし、珍しいとは思わないよ。なにより僕自身が男だしね」

「あ、そ、そうですね。すみませんでした」

「いいえ、こちらこそ誤解させることを言ってごめんね。料理、楽しもう」

「はい!」

広瀬くんの顔に笑みが戻る。

その笑顔を見て、私もホッとした。

……それにしても。

広瀬くんって自分が料理していることを妙に恥ずかしがっているみたい。

しかも、それは多分広瀬くんが男の子だから……って感じがする。

今時、男の子だから料理しないなんて偏った考えだと思うけど。

広瀬くんは随分古風な価値観なのかな。

それとも他に理由があるのだろうか。
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