広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
***

「今日のメニューは皮から手作りの餃子です。材料はー ……」

少し広めにリフォームされたうちのキッチン。

10人ほどの生徒さん。

どちらかといえば料理を習いにきているというより、趣味で楽しくみんなでクッキングという雰囲気だ。

それはお父さんが望んだことでもある。

お父さんは料理の技術を教えたいというより、料理をを楽しめる場所を作りたいと昔に言っていたから。

そして私と広瀬くんはそんなお父さんのそばに立ち、料理を手伝いながら、生徒さんがやりやすいようにこまごまと動いている。

「ここで野菜の水気をしっかりきっておきましょうー。たねはハンバーグのようにしっかりこねるのでなく、ざっくり混ぜ合わせる感じがいいかなー」

「………わかりました」

広瀬くんの働きは素晴らしかった。

さすが普段から学級委員の仕事をこなしているだけあり、よく気がつくし動きにも無駄がない。

しかもしっかり手伝いながらも、お父さんの話をメモまでしていたのだ。

「ひ、広瀬くん、なんだかごめんね。すごく忙しい感じになっちゃったね」

広瀬くんが居づらくないように私と一緒にお手伝い……なんて気軽に決めたけど、これなら生徒さんで入ってもらった方が集中できて良かったかも。


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