広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
結局。
長森くんが意を決してくれたのは、私が2つめのクレープを食べ終わったとき。
長森くんと広瀬くんはすでに完食していた。

「あ、あのさ!日下部さん、ちょっと聞きたいんだけど」
「う、うん」
「小泉って彼氏とかいんの?」
「こいずみ……」

弥生のことだ。
で、その弥生に彼氏……。

「いないけど……」
と答えて、さすがの私も理解した。
長森くんの様子。
頼みごと。
そしてきっと修学旅行で私たちと同じ班になろうと言ってきた理由も。

「長森くん、弥生のこと好きなの?」

ストレートにきくと、わずかに戸惑ったような顔をしたあとハッキリうなずいた。

「実はそうなんだ。それで……」
「修学旅行でがんばろうと思ってるんだねー。だから同じ班になろうって言ってくれたの?」
「あ、はいそうです。……日下部さんぼーーっしてる風で割と鋭いね」

「長森!」と広瀬くんが横から突っ込みをいれた。
ぼーっとしているというのは弥生からもよく言われるので、私はあまり気にしてないけれど。

「それでさ、日下部さんから見て小泉ってどんな感じ?好きなやつとかさー、誰かと付き合いたいとか、そういうのある?」
「うーーーん………」

残っていたクレープを一気に頬張り、腕を組む。
弥生の恋愛かあ。
親友のそういうことを本人の許可なくペラペラ話すのは気が引ける……が、実はそんな心配はほとんどない。
なぜならペラペラ話すような恋愛話が皆無なのだ。
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