広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
「いいにおいー」
「でしょう?発売したばかりだけど人気あるのよ」
「これくらいなら学校につけていけるかもー」

うちの高校は基本的にはメイクは禁止だけど、薄い色のリップや軽い匂いのパフュームは容認されている。
といっても、それ以外にもうちょっとメイクをしている子も結構いる。私はリップくらいだけど。

「……あら、和花にしては珍しいわね。学校につけていきたいなんて」
「だってこれ、なんだか美味しそうなにおいがするんだもんー。授業中お腹すいたときとかいいかも」
「あははっ。なるほど、和花らしい。……ひょっとしたら好きな人でも出来たかと思ったのに」
「え!」

ふいに。
広瀬くんの姿が浮かぶ。
顔が赤くなった気がして、思わずお母さんから目をそらしてしまった。
お母さんは気づかなかったのか、特になにも突っ込んでこない。

「あ、それと……同じパフュームがあと一つあるの。はい。良かったらお友達にでもあげてね。
さーて、お腹すいたー。着替えてこようっと」

お母さんはそう言うと、さっきと同じ紙袋を私に持たせて、リビングを出ていった。
キッチンではお父さんがいそいそとお母さんの夕食を用意している。

いつもと変わらない、夜の光景。
でもなんだか甘い香りにくらくらする。
パフュームの香りかな。
それとも……
それだけじゃないのかな。
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