やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ

確かに酷い。
しかし、朋世の口から彼女を慰める言葉は出なかった。

要はふっと鼻で笑って呆れたように深いため息をついた。

「甘えんなよ。人の男は平気で奪っておいて、自分がされるのは嫌とか……」

要の容赦ない攻撃が続く。
その相手が女の子であろうとも一切の妥協(だきょう)を許さない。

「お前、マジでふざけんなよ!」

腹を立てた風見が要の胸倉をつかんで声を荒げた。
朋世はそれを止めようと前に出たが、必要無いというように要が制止する。

「殴るなら殴れよ。次の公式戦に出られなくなってもいいならな」

要は冷静だった。
彼の忠告を聞いて、風見は悔しそうに胸倉を掴んでいた手を離す。

「お前ら二人、お似合いだよ」

要が吐いた捨て台詞に、怒りと悲しさで若奈の顔は真っ赤になる。

「もう知らない!」

若奈は腹を立ててその場から逃げるように去っていく。
風見も「若奈、待てよ」と彼女の後を追っていった。
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