仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「そっか。
じゃあ、イルカショーは見なきゃね。」


しかし、暁里は、入館してすぐに、シャチに釘付けになった。

「かわいい〜!!
あ、こっち来るよ!」

シャチが正面からやってきて、ガラスの直前で左に向きを変えて去って行く。

「キャー、かわいい〜!
ようこそって言ってくれてるみたい。」

ガラスに張り付いてる子供たちの後ろで、暁里は無邪気にはしゃぐ。

「俺には、そんな暁里の方がかわいいよ。」

俺は笑みをこぼしながら、暁里の腰に手を添えた。

手から伝わる暁里の全てが愛しい。

昨日、1日会わなかっただけなのに。


ずっとシャチを眺めている暁里を促して先に進む。

本当は暁里が満足するまで見させてやりたいけど、そうすると、暁里の好きなイルカショーが終わってしまうから、俺は暁里の代わりに時計とにらめっこをしながら、時を過ごす。

が、今度は、ベルーガに釘付けになってしまった。

「ベルーガもかわいいね〜。」

白イルカは確かにかわいい。

かわいいけど、時間には限りがある。

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