仮想現実の世界から理想の女が現れた時
すると、どこからか高い音が響いた。

「これ?
もしかして、ベルーガの声?」

「みたいだね。」

暁里はまたこの水槽の前から動けない。

俺はイルカショーを餌に先へと促す。


水族館が好きだとは言ってたけど、これほどとは。

「どうかした?」

暁里が不思議そうに俺を見上げる。

「いや。
暁里、どの子供より、水族館を満喫してる
だろ?
くくくっ」

ほんと、かわいい。

暁里の新たな顔を発見するたび、前より好きになるのはなんでだろう。

「つまんない顔してるより、いいでしょ?」

「うん。
こんなに楽しんでもらえたら、来た甲斐が
あるよ。
暁里、かわいいなぁ。」

そう言って、俺は暁里の頭を撫でる。

「もう!
子供扱いしないでよ。」

暁里が少し怒る。

「してないよ。
暁里がかわいすぎるから、抱きしめたいのを
我慢してるんだ。」

俺がどれほど暁里のことが好きか、分かってないだろ。

俺は暁里の頭にそっと口づけた。

< 184 / 227 >

この作品をシェア

pagetop