仮想現実の世界から理想の女が現れた時
俺はもう、先へ促すのはやめた。

俺はのんびりと、ペンギンを眺める暁里を眺める。

それに気づいた暁里が、

「なんで?」

と尋ねる。

「決まってるじゃん。
今、ここにいる生き物の中で、1番かわいい
ものを眺めてるんだよ。」

俺にとっては、ペンギンよりイルカより、暁里がかわいい。

「もしかして、ペンギンに飽きた?」

暁里が心配そうに尋ねる。

「んー、暁里に飽きないから、ずっといて
いいよ。
この先は、もうないから、慌てる必要も
ないし。」

だけど暁里は俺に気を遣ったのか、もう少しだけペンギンを眺めて、その場を後にした。



売店でお土産を買う。

イルカやペンギンをモチーフにした指輪を見て、

「かわいい〜」

と、暁里は、手に取って、次々にはめてみる。

すかさず俺は、

「暁里は指輪のサイズいくつなの?」

と聞いた。

「9号だよ。
でも、これはお土産用にフリーサイズに
なってるから、心配しなくても大丈夫。」

9号。

よし!
これで、指輪を買える!
今日一番の収穫はこれだな。


でも、暁里は結局、見ただけで、指輪は買わなかった。

だから、代わりに俺は、お揃いのマグカップを買った。

これから、暁里と一緒に使おう。

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