仮想現実の世界から理想の女が現れた時
ショーが始まった。

華麗にジャンプする姿は、とても素晴らしく、かわいかった。

でも、それ以上に、キャーキャー歓声を上げながら、拍手を送っている暁里がかわいい。

すると、俺からの視線に気づいた暁里が、

「何?」

と聞いてくる。

何? って聞かれても…

「暁里を見てる方が楽しい。」

としか言いようがないよな。

「私は見世物じゃありません。」

暁里はそう言って目を逸らすけど、俺はやっぱりイルカより暁里を眺めてる方が幸せだなぁ。



ショーが終わり、ベルーガやシャチの練習風景を眺め、先に進む。

カラフルな熱帯魚や呑気に見えるチンアナゴなどを眺めて、その先のペンギンにたどり着いた。

大きな皇帝ペンギンは、これぞペンギンという丸いフォルムをしている。

暁里はまた、水槽の前に釘付けになった。

目の前を素早く泳いでいくペンギン。

奥の方で、よちよち歩くペンギン。

最前列の子供たちがどんどん入れ替わってるのに、暁里はずっと動けずにいる。

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