仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「え!? 瀬名をですか?」

「人が足りないのは分かってる。
来年度にはSEを大幅に増員してもらうから、
今年度は今いるメンバーで何とか乗り切って
欲しい。」

市原課長は一瞬、渋い顔をしたが、

「分かりました。」

と頷いた。

実際には、俺は異動翌日には、人事と社長にSEの中途採用を掛け合い、求人を出している。

だが、まだ数名面接をしただけで、正式には決まっていないので、ここでは黙っておいた。

「ご迷惑をかけて、申し訳ありません。」

瀬名は課長に頭を下げる。

お前のせいじゃないだろ。

そう思いながらも、そこで頭を下げられる瀬名を俺は好ましく思った。

「瀬名さんのせいじゃないから。」

市原課長が笑う。

システム課はほのぼのとしたあたたかい人間関係が築かれているようだ。

瀬名は1日掛けて、抱えていた仕事を他のメンバーに引き継いでいく。


俺は営業課の今村課長を呼んだ。

「来週から、瀬名を営業にする。
今日中に異動させるから、
席を用意してやってくれ。」

「はい。
でも、指導は誰にさせますか?
この辺りのベテラン勢にさせるか、
同期の田中あたりにやらせるか… 」

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