仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「おはようございます!!」

瀬名が元気のいい挨拶とともに出勤してきた。

くくっ
毎日、毎日、朝から元気だな。

早朝の閑散としたオフィスに入るのに、瀬名は無駄に明るい。

明るいけど、今、営業課にいるのは、瀬名と田原だけだから、営業に来たばかりの瀬名は何をすればいいのか分からず、手持ち無沙汰でキョロキョロしている。

俺は、

「瀬名、会議室へ来い。」

と呼んだ。

瀬名とともに会議室に入ると、俺は指示を出す。

「瀬名は商品知識は既にどの営業よりも
持ってる。
後はそれをどう売るかだ。
とりあえず、今日は俺と2件営業に出る。
10時に出るから、それまでに2件の会社概要を
頭に叩き込んでおけ。」

俺は、先方の会社案内のパンフレットを渡した。

「会社の情報はこれだけじゃない。
ネットに出ているものも含めて、どんな情報
でもすぐに引き出せるように覚えておくんだ。
できるな?」

俺がそう言うと、瀬名はおずおずと上目遣いで尋ねる。

「はい。
でも、あの、私の指導係って…」

くくっ
俺が教えるって言っておいたのに…

「俺だ。
最初にそう言っただろ?」
< 32 / 227 >

この作品をシェア

pagetop