仮想現実の世界から理想の女が現れた時
一瞬、瀬名の顔に影がさす。

「ほんとに部長自ら教えてくださるとは
思ってなかったので…
よろしくお願いします。」

瀬名は頭を下げるが、喜んでいないのは明白だ。

くすっ
その表情に思わず、笑みがこぼれる。

「お前、今、"鬼"と仕事したくないなぁ…とか
思っただろ?」

「え!?
いえ、そんな事…」

否定しきれないところが正直すぎだろ。

「お前は表情が顔に出すぎる。
プラスの表情は相手に好感を持たせるから、
いくら出してもいいが、マイナスの表情は
絶対に出すな!
このエロ親父!ってもし思ってたとしても、
絶対に相手に悟られるな。
いいな!」

俺は営業の基本を教える。

「はい!」

瀬名は返事とともに強張った笑顔を見せた。

ま、突然の営業職、鬼と評判の上司、不安にならない訳がないよな。

俺は表情を緩めて言う。

「営業に来た事、絶対に後悔させないから、
安心してついて来い。」

すると、瀬名の表情が見る間に明るくほぐれていった。

うん、お前はそうやって笑ってる方がいい。

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