仮想現実の世界から理想の女が現れた時
瀬名の手が石原から離れたことにほっとしながら、瀬名を促す。

「ほら、瀬名、行くぞ。
悪い。
瀬名が限界だから、連れて帰る。」

俺はみんなに声を掛けて、瀬名の腕を取って立たせた。

俺は左手に瀬名の荷物を持ち、右手で瀬名を支えて、駅前からタクシーに乗る。

乗ってすぐ、瀬名は俺の肩にもたれ掛かるように寝てしまった。

それが俺はなんとも言えず、嬉しかった。

瀬名を取り返したような、不思議な気分だった。


俺はまたタクシーを待たせて、瀬名を部屋に送り届ける。

「瀬名、ほら、水。」

瀬名をベッドに座らせて、グラスの水を差し出すが、酔っ払いの瀬名はそれどころではない。

「んー、ムリ〜
ぶちょお、飲ませてください〜」

「ったく…」

口では悪態をつきながらも、俺は内心喜んで前回のように口移しで水を飲ませる。

2度目の水を流し込んだ所で、瀬名は俺の腕にしがみついた。

クン…

瀬名の喉が鳴って、水を飲み込んだのを確認して、俺は唇を離す。

すると、半ば閉じられていた瀬名の目が開いた。

酔いのせいなのか、潤んで赤くなった目元が、妙に色っぽい。

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