仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「暁里、好きだよ。」

そう言うと、俺はそっとキスをする。
触れるだけの優しいキス。

もしかすると、暁里にとっては、昨日のキスが初めてのキスかもしれない。

「昨日は、あのまま帰ったら、全部忘れて
なかった事にされるんじゃないかと思ったら、
帰れなくなった。」

俺は自嘲気味に話す。

「暁里、具合はどう?
出掛けられそうか?」

俺は暁里の顔を覗き込んで尋ねる。

「はい。大丈夫です。」

「じゃあ、夢の国へ行こう。」

「え?」

「遊園地、好きなんだろ?」

「はい!」

「待ってるから、支度しておいで。」

「はい!!」

暁里は元気よく起き上がって、着替えを出すと、風呂場に駆け込んだ。

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