君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 茜に向けて、いったんは伸ばした手の仕舞い方が分からずに、俺は。
 

 抱きしめたい。


 何故か浮かんできたそんな誘惑は。


 これからの、俺たちの行く末を暗示していたに違いなかった。





 それは、俺が初めて茜を「女」として意識した夜だった。






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