君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 茜の傍にいるタケが、茜の秘密を知っていてくれることは、心強かった。

 やっぱり、タケにばれないようにしないと、と思うと、おれも神経を使う。茜はタケにばれるはずなんてないって思ってた、みたいだけど。
 今も茜は、タケがあのことを知っている、ってことは知らないはずだ。

 茜は、知らないふりをしてくれている人がいることを、知らない。みんな自分のことを男だと思ってるって信じてる。

 それをおれは否定する気はないんだけど。

 茜が、どんなに自分が『女』であることに、『女』として見られることを恐れているか、知っていた。

 だから、茜はそんなこと考えないで、生活をこのまま送り続けてくれたら、いいと思う。


 おれは、それが茜の幸せだって、そう思ってた。



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