君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
恋情


「……どうしたの?茜」


 もうすぐ年の暮れを迎える街は、にぎやかで騒がしかったけど、割かし閑静な住宅街に建っている俺の家の周りは、もう夜の10時を過ぎていることもあって、華やぎは息を潜めていた。


 俺も珍しくこの日はバンドの練習がなかったものだから早くに家に帰っていて、自分の部屋でのんびりと好きな音楽を聴きながら、ごろごろしていたら、母さんの声に呼ばれたんだ。

「茜くんが来てるわよ」その一言で、俺は言葉通り今まで転がっていたベットから飛び起きた。


 ここ最近は、半年前、夏休みの直前に行なった『Parks』でのライブ以来、波に乗ってきたバンドでの活動が忙しく、俺はあまり茜や創たちに会いにいけていなかった。

 それも、なんとなく茜への接し方に困ってしまって会いづらかった、と言う方が正解なのかもしれない。
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